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詩集 花開くGENE 南原充士 著 洪水企画発行 草場書房発売 A5判 並製本 112頁 定価1890円(本体1800円+税) ISBN978-4-902616-14-9 C0092 |
南原充士詩集 花盛りの華の奥に破滅を幻視し 廃墟のただ中に生命の肯定を祈る 独自の叡智と理論を仕込んだ円熟の詩群 |
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目次 Ⅰ 怪物園管理規則制定経緯 差し出される手 戸惑い 時の歩み 捨男 蜃気楼 喜怒哀楽 花言葉 花開くGENE 春の雨 わたしはわたしに向かってなにかを言った I said something to myself Ⅱ 『トリップ』―試篇 念仏のごとく うふんあっはん あら らんらん 【連禱八変】 intermezzo『アシスとガラテアの悲恋』 Ⅲ 他人の庭 《史実の誕生》 眩暈 歴史の路地裏または理論への信仰 時間の自由 無知蒙昧の世過ぎ 電脳イルカの冒険 ジュエリーの話 ワイン 額縁 命の果て 宇宙の果て 痛みの果て 終末のイメージ 祈りに代えて |
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書評 記事 | |
収められた三十三編の詩に「遺伝子」に関係する作品は少ないが、この詩集の作品には南原特有の時代の見方、捉え方が描かれていて興味深い。この書評を書くに当たって久しぶりに彼のブログを覗いてみたが、その話題の豊富さに圧倒される。テーマが多岐にわたり、どの分野の論も彼独特の思想の形態に裏付けられているようだ。そしてなによりも日々、ブログに向かっているというその熱意とその莫大な量に圧倒される。政治、経済、社会、文学、芸術、思想、哲学などの分野を日々、評論風、あるいはエッセイ風に切り刻んで現代を描写している彼の手法は詩に通じるものがあり、この詩集は彼がブログに向かう姿勢と表裏一体として読むべきであろう。 意味性、論理性を重視すると、ポエジィは薄まってしまう。あるいは、言語性ばかりを意識すると、意味性、論理性が薄まってしまう。それならば、詩という表現形式として、どのような書き方が相応しいのか。短歌や俳句にも手を広げている彼にとって、詩を書くことは他の文学ジャンルと区別するためにも形式を選ぶことでもある。詩集のあとがきで彼は、「Ⅰは、ソネット形式を基調とした抒情的な作品。Ⅱは祈など、いわば言葉が祈りに変化してゆくプロセスをさぐってみた作品。Ⅲは哲学的な視点を基にした叙事詩」と書いている。彼はまたテーマごとに、そのテーマに合った文体で作品化しようと試みたのだろう。「詩を書くときにだれに向かって提出しようとしているのか?」という問いを、「文学のデパート《エッセイ篇》=越落の園」という彼のブログの中で見つけたが、自分のひとつひとつの作品を時代とともに分類し、彼の精神史の中に位置づけようとしている姿勢が窺える。そして、他者や自分に向かって語る言葉と、自分の時代を描写しようとした記録風な文体とに、くっきりと分けて詩を成立させているように思う。しかし、時代を冷静に記録するためにテーマとして「祈り」を設定したのであろう。 この詩集の作品の多くは文明論、あるいは文明批評であるように私には思える。パートⅢの哲学的な視点を基にした叙事詩が、この時代の断面が切り口鋭く描かれているように思う。 わたしにはただ目撃という役割しかできないが この時代の様々な場所、特に終末観が漂っている都市を移動しながら作られている作品が多いが、彼の重視するのは現実的に肉体を移動させることではなく、肉体を移動することによって見えてしまった時代の落差や隙間を描写し、時代そのものが移動していくその過程を描こうとしているようだ。 自分を地面に向けて解放してやると こんな詩句が南原らしい表現だと思う。宇宙からも自分を見つめ、現実に見える風景と意識下の風景を重ねようとしているのだ。 |
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