父への便り





父への便り

笠原淳著(芥川賞作家)

四六判 上製本 268頁
定価(本体2000円+税)
ISBN978-4-902616-01-7 C0093
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笠原淳(かさはら・じゅん)

1936年神奈川県生まれ。
作家。
1969年「漂白の門出」で第十二回小説現代新人賞受賞。
1976年「ウォークライ」で第八回新潮新人賞受賞。
1984年「杢二の世界」で第九十回芥川賞受賞。
著書に、『杢二の世界』『サイモンの塔』『十五歳 夏』など



日常と非日常のあわいを自在に逍遙する作家の世界。
研ぎ澄まされた筆致で芥川賞作家が描く味わい深い十三の短篇。



日本経済新聞 2005年3月31日(木)夕刊  目利きが選ぶ今週の3冊

心理の起状 静かな広がり

 この短篇集に収められた小説は、あまりいま流行っているものとは言えないかもしれない。そもそも小説に流行りなんかあるのか、と言われれば、それは明らかにある。あるが、そんな流れに与しないこともできる。通読して感じたのはそんなプライドだ。
 笠原淳の小説は、芥川賞を受賞した『杢二の世界』を読んだきりだった。この本の短篇にしたって、半分以上が一九八〇年代に発表されたものである。しかし、ひっそりとだが、確実に積み重ねられた感じである。
 基本的なトーンは、老境に差しかかった主人公が自身の老いを自覚したり、若さに対して恬淡としているけれどどこか諦めきれなぬ感情を抱いたりする心理の起状である。博物館で偶然すれ違った若い母親に対して粘つくような情欲を燃やしたりするシーン(「凧」)は、情欲と結託すればいやらしいだけだが、妄想と現実のあわいにふと入り込んだふうに、丁寧に書き分けられている。
 都心の老朽化した家を捨てて郊外に居を構えた主人公一家。一種の郊外論としても読める。とにかく、こんなに静かで豊かな小説世界に久しぶりに触れた気がした。
――評論家・陣野俊史



週刊読書人 2005年4月1日(金)

微妙に漂う危機の気配  定着と離脱の矛盾する願い  地を離れて浮遊する心的現象の危うさ――松原新一





                                                      

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