山田兼士 詩集  月光の背中





山田兼士 詩集
月光の背中

洪水企画発行 草場書房発売
A5判 並製本 91頁
定価(本体1800円+税)
ISBN978-4-902616-84-2  C0092
【詩歌】
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山田兼士(やまだ・けんじ)


詩集 『微光と煙』 思潮社   二〇〇九年
   『家族の昭和』 澪標  二〇一二年
   『羽曳野』 澪標    二〇一三年

評論 『ボードレール《パリの憂愁》論』 砂子屋書房 一九九一年
   『小野十三郎論―詩と詩論の対話』 砂子屋書房 二〇〇四年
   『ボードレールの詩学』 砂子屋書房 二〇〇五年
   『抒情の宿命・詩の行方―朔太郎・賢治・中也』 思潮社   二〇〇六年
   『百年のフランス詩―ボードレールからシュルレアリスムまで』 澪標    二〇〇九年
   『谷川俊太郎の詩学』 思潮社   二〇一〇年
   『詩の現在を読む 2007-2009』  澪標    二〇一〇年
   『高階杞一論―詩の未来へ』 澪標    二〇一三年
   『萩原朔太郎《宿命》論』 澪標  二〇一四年
   『詩と詩論 二〇一〇―二〇一五』 澪標  二〇一六年
   『詩の翼』 響文社  二〇一六年

翻訳 『ボードレールと「パリの憂愁」』(ヒドルストン著) 沖積舎   一九八九年
   『ドビュッシー・ソング・ブック 対訳歌曲詩集』   澪標    二〇一三年



コクトオ、小野十三郎、吉本隆明など先人を偲ぶ作品、奈良散策の見聞をもとに万葉の時代の悲劇をうたった作品、自分史の一こまを陰翳深く刻印した作品などで構成し、回文や折句などの言葉遊びをまじえながらディアローグによる詩の可能性を探究する虚実照応の第四詩集。


●『月光の背中』あとがきより

 古市古墳群の町、羽曳野市に移り住んでちょうど五年が経ちました。、飛鳥・大和方面が断然近くなり、しばしば神社仏閣を訪れるようになっています。古市発の急行は飛鳥と河内の境にそびえる二上山を大きく迂回して、橿原神宮前に二十分ほどで到着。飛鳥はすぐその先です。また、私鉄とJRを乗り継いで法隆寺までは四十分、奈良市内へも五十分ほどで到着します。法隆寺にはもう何度参拝したか数えきれません。何度訪れても、相変わらず五重塔と百済観音像には圧倒されますが。飛鳥の甘樫の丘から展望する大和三山の季節ごとの姿も、何度見ても見飽きることのないものです。
 そんな地の利(?)を利用して書いた作品を「I」章にまとめました。この年齢になってこの土地に住んでいることの偶然に感謝したいと思います。もっと若い頃にこの地に住んでいたとしても、こうした作品は生まれなかったことでしょう。私の場合だけでなく、すべての人が、それぞれの時期に応じた固有の作品世界の可能性を秘めている、との思いが拭えません。もちろん、土地のことだけではなく、時代、風土、生い立ち、環境、嗜好などを含むあらゆる経験にもよることでしょう。インターネットの普及によるウェブ世界体験もその一つかもしれません。
 十年前に開設したウェブサイト「山田兼士の研究室」では、評論、エッセイ、翻訳、詩などを随時公開するとともに、ほぼ毎日欠かさず日録を更新しています。二〇一三年からはブログに移転して、日々の記録と文章練習に活用しています。ある時、ふと思いついた回文を敬愛する詩人に褒められたのに味をしめて(?)、ほぼ一年間、日録のタイトルに回文を用いてみました。俳句の五七五音が回文に都合がよいことが分かってからは、できるだけ季語も用いるように心がけました。回文による俳句なので名づけて「俳回文」。「II」章の作品はここから生まれたものです。
 第一詩集『微光と煙』で試みた「詩論詩」も、かたちを変えて書き続けています。「III」章の作品はその発展形のつもり。「IV」章には、追悼詩とその他の作品を集めました。
 全体を通して折句詩(アクロスティック)が多いのは、元テキストとの対話の意志によると考えています。一種の「本歌取り」のようなもので、モノローグよりむしろディアローグによる詩の可能性の探究、といえば少々おおげさに聞こえるかもしれませんが、いずれにせよ詩は他者との内なる対話の中から生まれるもの、という近年の思いの反映と心得ています。







                                                      

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