杉中雅子歌集 ザ★カ・ゾ・ク




杉中雅子歌集
ザ★カ・ゾ・ク

洪水企画発行 草場書房発売
A5判 並製本 160頁
定価(本体1800円+税)
ISBN978-4-902616-16-3  C0092
                                            送料無料


杉中雅子(すぎなか・まさこ)

1952年(昭和27)、広島市に生まれる。
1992年『プチ★モンド』創刊に参加。
2000年『まがたま』創刊に参加。
2005年『ぱにあ』05冬号58より参加。
短歌文芸誌「ぱにあ」編集委員



『ザ★カ・ゾ・ク』帯より

杉中家では、男の子は二十歳の成人になると家から出す。いわゆる「自立」をさせるのが決め事である。それだけに慈しみ、厳しく躾けてきたのであろう。この決意と決断こそが、真の親心であり、愛情であり、この親と子の関係には、尊い教訓がある。作品の根底には、究極の家族への愛と、人類愛が存在している。家族と時代に向き合った真摯な作歌態度が、理解ある読者の心にとどけばありがたい。 (秋元千恵子)
(作品抄)
めぐりくる母の季節よ香にたちて白沈丁花咲きあふれたり
呆けたる義母(はは)の心に棲む悪魔そっと静かに眠っておくれ
副都心高層ビルに乳白のヴェールかかりて時雨は来たり
神仏の在るかなきかを言い合える夫婦なりけり鍋煮立つまで
虹の橋走る車の排気ガスこころにかかる行方なりゆき
ヨーヨー・マのチェロの調べにわだかまりほろほろほぐれてゆく春の夜



『ザ★カ・ゾ・ク』あとがきより

物心ついた頃から、「書く」ことは好きだった。母が初孫になる私の娘を抱きあやしながら、「子供の成長を折々残してやれるものがあったらいいねぇ」何気なく言った言葉だが、以来、私の心の中で「何か」を探していた。
一九九〇年、田無市(現西東京市)主催の、市民講座「うたうこと生きること」(講師松平盟子氏)に参加した。この講座は修了後、短歌実作を目的とするサークルへと発展し、そこで歌誌『プチ★モンド』に参加する機会を得た。初めて自分の作品が活字となった感激は今も鮮明である。
短歌を詠う……全くの初心者であったため、松平先生に同行されていた相沢光恵氏の指導もお願いした。義母の介護の手伝い、パート勤務開始という時間の制約から『プチ★モンド』を離れ、相沢氏の個人指導を受ける様になり、『まがたま』に参加。
短歌の勉強を始めて十五年という大きな節目に『ぱにあ』に出会った。かねて相沢氏から紹介されたこともあったので、参加できることをうれしく思った。短歌を学ぶ場も変わり、これまでの作品をまとめてみたいと思う様になった。参加してきた三誌ともに詠う対象は一貫して家族だったことに思いあたり、『ザ★カ・ゾ・ク』というタイトルを選んだ。
第T章では、私の原点となる家族のいろいろな場面を取り上げた。両親との別れは早く、二十九歳の時に父、母は三十六歳の時に亡くなった。三人の子を授かり、その成長を見せられなかったことが何よりも残念、悔やまれることである。義母との関わりも深い。未熟な嫁(私)を総じて大らかに見守ってくれた。今年九十一歳、童女に戻った義母の笑顔は本当にあどけない。「揺籃」で詠った義母を子供達に伝えておきたい。
子供達の成長につれ、社会と関わりを持ちたいという思いから、パートタイマーとして働くことの同意を家族から得、かつての職場のOG採用に申し込んだ。一九九九年二月より約七年間の職場でのことを第U章にまとめた。二十二年振りの会社勤め、公私共に取り巻く環境の大きな変化は了解していたつもりだったが、事務机の上にはパソコンが置かれ、卓上電話は携帯電話へと変わっていった。家庭で「お山の大将」になっていた私には何物にも代え難い貴重な経験であった。大過なく退職できたことをありがたく思う。二〇〇七年三月より近隣の学習塾に勤め始めた。全く関わりのない子供達との接点はわずかな時間の学習を通してのみ。ここからどのようにして、子供達を理解していけるのか? その困難さを痛感している。
第V章、「スローライフ」はパート勤務を退き、専業主婦に戻った日々の作品である。加齢と共に衰えてきた気力体力を、これからの生活に維持してゆきたいと切に念じている。末の子もようやく二十歳を迎え、自活開始。又、夫と二人の生活である。これまでの経験を活かし、家庭内に留まらず、社会にも目を向けた風通しのよい暮らしを心がけたい。この様な思いで、第W章をまとめてみた。結婚を機に、故郷を離れ、東京暮らしが始まった。故郷遠く……ではあるが、それはいつも心の中にあった。改めて感じたことである。
現在「ぱにあ」に所属しているが、作品を発表するにあたり、月一回の作品研究会に出席している。加えて、年四回、季節ごとの吟行即詠会に参加。吟行即詠会についての知識もないまま、散策を楽しむだけで「詠む」までに至らなかった初参加の頃に比べ、ようやくおもしろさがわかり始めたところである。





                                                      

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